媒介分析
|Mediation Analysis
媒介分析
Mediation Analysis
独立変数が従属変数へ影響する過程を、媒介変数を通じた間接効果と直接効果に分解して評価する手法です。効果が「なぜ・どのように生じるか」を検証したい場面で利用されます。
A method that decomposes the effect of an independent variable on an outcome into indirect effects via a mediator and direct effects. It is used when you need to test how and why an effect occurs.
媒介分析とは
媒介分析(Mediation Analysis)は、独立変数 X が従属変数 Y に与える影響を、媒介変数 M を介した間接効果(Indirect Effect, IE)と媒介変数 M を介さない直接効果(Direct Effect, DE)に分けて評価する要因分析の分析手法です。単純に施策や介入に効果があるかだけでなく、その効果がどのようなプロセスで生じるかを検討できる点が特徴です。従来の回帰分析やロジスティック回帰のようなモデルは、独立変数から従属変数への直接的な効果しか評価できませんが、媒介分析では要因と結果を媒介する別の変数の存在を仮定することができます。
上記のような独立変数 X から従属変数 Y に対する総合効果 c は、媒介変数 M を仮定する場合「直接効果 c'」と「間接効果 a × b」に分解されます。
つまり、「総合効果 = 直接効果 + 間接効果」 として表され、媒介変数を介した効果と介さない効果の影響を評価することができます。このようなモデルは、教育介入、行動変容プログラム、マーケティング施策、臨床介入などでは、介入の有効性だけでなく作用メカニズムを検証する目的でよく使われます。
媒介分析の適用場面
媒介分析は次のような場面で有用です。
- 直接効果と間接効果を区別して解釈したい
- 介入・施策の効果が、どの心理・行動指標を通じて現れるかを知りたい
- 結果を説明可能な形で示したい
- モデル改善のために、効果のボトルネックとなる経路を特定したい
例えば、下記のようなモデルを仮定して、研修(training)によって 事後得点(post_score)が上がる場合、自己効力感(self_efficacy)の向上がその一部を媒介しているかどうかを検証できます。
この図では、研修→自己効力感の経路 a と自己効力感→事後得点の経路 b の積 a × b が間接効果、研修→事後得点の経路 c' が直接効果として表されます。総合効果 c が確認され、かつ間接効果 a × b が有意であれば、「研修の効果の一部は自己効力感の向上を介して生じている」と解釈できます。
活用分野とメリット
- 医療・公衆衛生: 治療・支援の効果が行動変容やアドヒアランスを介するかを評価し、介入設計の改善に役立つ
- 心理・教育: 学習支援やカウンセリング効果のメカニズムを検証し、理論モデルの妥当性確認に役立つ
- マーケティング: 施策が購買に与える影響を、認知・態度・意図などの中間指標に分解して施策最適化に使える
- 組織・人事: 人材施策が成果に至る過程(エンゲージメント等)を明確化し、優先施策の判断に役立つ
SPSS Statistics 32での媒介分析
SPSS Statisticsでは、v32の新機能としてGUI上で媒介分析を実行できるようになりました。
分析メニューは拡張機能等ではなくSPSS標準の機能として用意されており、「分析」> 「メディエーション分析」で設定ダイアログボックスにアクセスできます。
最初に、[ モデルの種類 ] タブで媒介分析の統計的性質を定義します。「メディエーター・タイプ」 および「結果タイプ」の設定により、基礎となる分布、リンク関数、および後続のタブで使用可能な変数が決定されます。
[ 従属変数 ] タブと[ 予測値 ] タブでは、因果経路を構成する変数を役割ごとに割り当てます。アウトカム変数(従属変数)は最終的に説明したい結果(Y)、主要予測因子(独立変数)は介入・属性などの起点となる変数(X)、媒介変数は X から影響を受けて Y につながる中間変数(M)として指定します。
実務上は、時間的順序と理論的妥当性を先に確認してから割り当てることが重要です。役割の解釈が曖昧な変数を媒介変数に入れると、統計的に有意でも因果的な説明力が弱くなります。
また、必要に応じて共変量を追加し、交絡の影響を調整します。カテゴリ変数を投入する場合は参照カテゴリの設定、欠測値が多い変数を使う場合は有効サンプル数の変化も併せて確認すると、結果の解釈が安定します。
散布図やモデル要約、直接・間接・総合効果の推定結果、信頼区間を出力し、媒介効果の解釈を行います。
媒介分析の結果は、まず TE(総合効果) が有意かを確認したうえで、NDE / TDE(直接効果) と NIE / PIE(間接効果) の符号と信頼区間を見て解釈します。直接効果と間接効果が同方向であれば「媒介を通じて効果が増幅」、逆方向であれば「一部が相殺」と読めます。
実務上は、NIE や PIE などの間接効果の信頼区間が 0 を含むかを主に確認し、NDE や TDE などの直接効果は補助的に見ます。直接効果が残り間接効果もある場合は「部分媒介に近い」、間接効果が中心なら「媒介経路が主」と述べることが多いです。直接効果の非有意だけで「完全媒介」と断定することは避け、理論・研究デザイン・検定力も併せて解釈してください。
この出力例では、TE(総合効果)= 9.1795(95%CI: 6.8063〜11.5526, p< .001)とNIE(自然間接効果)= 7.2079(95%CI: 4.0716〜10.3443, < .001)が有意である一方、CDE / NDE / TDE(直接効果)= 1.9715 は信頼区間が 0 をまたぎ有意ではありません。この場合、効果は主に媒介経路を通じて生じていると解釈できます。
目安として媒介割合は NIE / TE = 7.2079 / 9.1795 = 0.785(約 79%)で、総合効果の多くが媒介経路由来であることを示します。SPSSでは「印刷」タブで「比率統計」を有効にすると、媒介割合を直接確認することもできます。
| 略語 | 英語名称 | 日本語名称 | 説明 |
|---|---|---|---|
| CDE | Controlled Direct Effect | 制御された直接効果 | 媒介変数を特定の値に固定したときの、説明変数が結果に及ぼす直接効果 |
| NDE | Natural Direct Effect | 自然直接効果 | 媒介変数が介入前の自然な分布を保つと仮定した場合の直接効果 |
| NIE | Natural Indirect Effect | 自然間接効果 | 説明変数が媒介変数を変化させ、その変化を通じて結果に及ぶ間接効果 |
| TE | Total Effect | 総合効果 | 説明変数が結果に及ぼす効果全体(直接効果と間接効果の合計) |
| PIE | Pure Indirect Effect | 純粋間接効果 | 交互作用の影響を分離したうえで、媒介経路のみを通じて生じる間接効果 |
| PE | Proportion Eliminated | 消失割合 | 媒介経路を調整したときに消失するとみなされる総合効果の割合 |
| TDE | Total Direct Effect | 総直接効果 | 媒介経路を介さずに説明変数が結果へ及ぼす直接効果の総量 |
特に、説明変数と媒介変数の交互作用がないモデルでは効果分解は比較的単純ですが、交互作用があるモデルでは直接効果・間接効果が媒介変数の水準に依存しやすくなるため、CDE や PIE、PE などの指標も併せて確認し、どの経路で効果が生じているかを分けて解釈することが重要です。
フォレストプロットでは、各効果の点推定値(点)と信頼区間(横線)を確認し、基準線(通常は 0)をまたぐかどうかで有意性を判断します。線が 0 をまたがなければその効果は有意、またげば不確実性が大きいと解釈します。あわせて、効果の符号(正/負)と区間幅を比較することで、どの経路の寄与が大きく、推定が安定しているかを視覚的に把握できます。
Amosでの媒介分析
IBM SPSS Amos では、媒介分析を構造方程式モデリング(SEM)として実行できます。 観測変数だけでなく潜在変数を含むモデル化、複数媒介経路の同時評価、モデル適合度(CFI/RMSEA など)の確認ができる点が強みです。 特に、理論モデルに沿ってパス図を明示しながら因果経路を検証したい場合に有効です。
ソフトウェア
SPSSでは、Statistics v32以降のBaseに含まれるMediation Analysis機能でGUI実行が可能です(従来はPROCESSマクロ利用が一般的でした)。Rでは、mediationパッケージのmediate()、またはlavaanパッケージのsem()を用いる方法が広く使われます。Pythonでは、pingouinのmediation_analysis()や、statsmodels(回帰+ブートストラップ)、semopy(SEMベース)などが選択肢です。
IBM SPSS Statisitcs 製品情報
IBM SPSS Amos 製品情報
参考文献
- IBM_SPSS_Statistics_Base.pdf (version 32)
- Baron, R. M., & Kenny, D. A. (1986). The moderator-mediator variable distinction in social psychological research: Conceptual, strategic, and statistical considerations. Journal of Personality and Social Psychology, 51(6), 1173-1182.
- Imai, Kosuke, et al. "Unpacking the black box of causality: Learning about causal mechanisms from experimental and observational studies." American Political Science Review (2011): 765-789.
- 清水裕士・荘島宏二郎(2017)『社会心理学のための統計学:心理尺度の構成と分析』(心理学のための統計学 3)誠信書房.
