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Kruskal-Wallis検定の後の多重比較の手法

公開日:  更新日:2023/10/17   SPSS TIPS Statistics 

3群以上の独立したサンプルの検定

Kruskal-Wallis test(クラスカル・ウォリス検定)は、3群以上の独立したサンプルの比較を行うノンパラメトリック検定の手法です。正規性を仮定できない場合や外れ値を多く含む場合、サンプルサイズが小さい場合などに用いられますが、1元配置分散分析と同様、群全体での差の比較を行うため、有意差を認めたとしても、具体的にどの群間に有意差が認められるかは分からないため、事後の比較として多重比較の手順を必要とします。

多重比較の手法としては、Steel-Dwass test(スティール・デュワス検定)や Mann-Whitney U test(マン・ホイットニーのU検定)による2群比較を行ってBonferroni(ボンフェローニ)による調整を行う方法などが知られていますが、IBM SPSS Statistisのノンパラメトリック検定のメニューを使用すると、Kruskal-Wallis検定の後の多重比較が自動的に行われます。

IBM SPSS StatisticsによるKruskal-Wallis検定の手順

(1) 「分析」メニュー >「ノンパラメトリック検定」 > 「独立サンプル」を選択します。
(2) 「フィールド」タブを開きます。
(3) 「検定フィールド」に「従属変数」、「グループ」に「独立変数」を指定します。
(4) 「設定」タブを開きます。
(5) 「検定のカスタマイズ」を選択します。
(6) 「Kruskal-Wallis(kサンプル)」を選択します。
ノンパラメトリック検定

IBM SPSS Statisticsのノンパラメトリック検定のメニューでは、検定手法を具体的に指定しない場合は、独立変数の水準の数によって、水準数が2つの場合はMann-WhitneyのU検定、水準数が3つ以上の場合はKruskal-Wallis検定が実行されることになります。以上の設定で、Kruskal-Wallis検定が実行され、有意差が認められる場合は「すべてのペアごと」の比較が行われます。

(7) 「実行」ボタンをクリックします。

検定結果の確認(Kruskal-Wallis検定)

Kruskal-Wallis検定の結果は、以下のように出力されます。この例では、治療法(3水準)による測定値(連続変数)の差の検定結果として、有意確率P=.000(P < .001)であり有意差が認められます。

この結果は、因子全体の効果ですので、2群間の差の検定結果は、ペアごとの比較テーブルを確認します。

■バージョン26以前のペアごとの比較テーブルの表示方法
バージョン26以前で2群間の差の検定結果を確認するためには、仮説検定の要約テーブルをダブルクリックして詳細を表示します。

多重比較

漸近有意確率(両側)は、Kruskal-Wallis検定の結果です。この検定結果が有意である場合、すべてのペアごとの比較が行われており、「ビュー」リストの「独立サンプル検定ビュー」をクリックして「ペアごとの比較」を選択すると、テーブルが以下の表示に切り替わります。

検定結果の確認(ペアごとの比較)

ペアごとの比較では、2群間で検定が行われて、その有意確率がボンフェローニ調整によって修正されます。この例では、治療法Aと治療法B(調整済み有意確率=P=.000)、治療法Aと治療法C(調整済み有意確率=P=.000)に有意差が認められますが、治療法Bと治療法Cの間には有意差を認めません(調整済み有意確率P=.250)。検定は3通り行っていますので、調整前の有意確率P=.083を3倍したものになっています。

2群間の差を比較するノンパラメトリック検定としては、Mann-WhitneyのU検定がよく利用されますが、IBM SPSS Statisticsのノンパラメトリック検定のメニューで自動的に実行される2群間の検定結果は、Mann-Whitney U testではなく、Dunn test(ダン検定)によって計算されています。したがって、この検定に使用した統計手法の説明に、Dunn またはDunn-Bonferroniの方法と記載します。

Dunn, O. J. 1964. Multiple Comparisons Using Rank Sums. Technometrics, 6, pp.241-252.
IBM SPSS Statistics Algorithms.pdf(英語版のみ):PDF776枚目
The Kruskal-Wallis, Friedman and Kendall, and Cochran tests use the procedure proposed by Dunn (1964) (originally designed for the Kruskal-Wallis test). The procedure uses ranks (or successes for the Cochran test) based on considering all samples rather than just the two involved in a given comparison.
IBM Support
Can SPSS perform a Dunn’s nonparametric comparison for post hoc testing after a Kruskal-Wallis test?
SPSS Statisticsは、バージョン19のNPTESTS手順(分析>ノンパラメトリック検定>独立標本)の重要なKruskal-Wallis検定に続いて、DunnまたはDunn-Bonferroni事後検定法を追加しました。
IBM Support
独立サンプルのノンパラメトリック検定にある、[Kruskal-Wallisの一元配置分散分析ANOVA]の[複数の比較]を設定した場合の出力について
「ペアごとの比較」は、
Dunn, O. J. 1964. Multiple Comparisons Using Rank Sums. Technometrics, 6, 241�241.
の検定です。具体的には「IBM SPSS Statistics Algorithms.pdf」をご参照ください。

その他の多重比較の方法

Dunn検定ではなく、Mann-WhitneyのU検定を用いた多重比較を行いたい場合は、過去のダイアログメニューからノンパラメトリック検定を実行し、手計算でボンフェローニ調整を行います。

(1) 「分析」メニュー >「ノンパラメトリック検定」 > 「過去のダイアログ」 > 「2個の独立サンプルの検定」を選択します。
(2) 「検定変数リスト」に「従属変数」、「グループ化変数」に「独立変数」を指定します。
(3) 「範囲の定義」ボタンをクリックします。
(5) グループ変数の値の範囲として「最小」と「最大」を指定します。
(4) 「Mann-WhitneyのU」が選択されていることを確認して「OK」ボタンをクリックします。

この手順を比較したい2群同士(治療法Aと治療法B、治療法Bと治療法C、治療法Cと治療法A)で繰り返して実行し、出力された有意確率を検定回数(この例では3回)によって調整して、有意性を判断します。

目的や使い方、用途に応じて、IBM SPSS製品を有効にご活用いただき、課題解決・価値創造にお役立てください。

■ IBM SPSS Statistics Base
IBM SPSS Statisticsによるデータ入力、読込み、データ加工、基本統計量の出力、推測統計(仮説検定・信頼区間)、回帰分析、因子分析、クラスター分析、分散分析、グラフ作成、外部ファイルへのエクスポート、拡張機能などを有する基本モジュール
https://www.stats-guild.com/ibm-spss

■ オンライン・トレーニングコース
IBM SPSS Statisticsによる統計解析
https://www.stats-guild.com/spss-e-learning/courselist

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