SRMR (Standardized RMR) の出力 / Amos
IBM SPSS Amosでは、推定したモデルの良さを評価するための非常にたくさんの適合度指標が、推定値の計算の結果として自動的に出力されるようになっています。代表的な適合度指標として、推定したモデルの分散共分散行列が実際の観測データの分散共分散行列をどの程度再現できているかをあらわすGFI(Goodness Fit of Index)、AGFI(Adjusted Goodness of Fit Index)、独立モデルと比較したときにモデルの適合がどの程度改善されたかに基づく比較適合の指標であるCFI(Comparative Fit of Index)、1自由度あたりの乖離度を表した倹約性修正の指標であるRMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)などです。
数ある適合度指標のなかでも、上記のGFI、AGFI、CFI、RMSEAは比較的よく使用されており、GFIとAGFIは0.9以上(GFIは0.95以上が理想)、CFIは0.95以上、RMSEAは0.05以下であれば良好で0.1以上で良くない適合と解釈されることが多いようです。
IBM SPSS Amosで推定値を計算した後、Amos出力にモデル適合としてまとめられる表は以下のイメージです。※出力の一部のみを掲載しています。
RMR(Root Mean square Residual)は、モデルによって推定された分散共分散行列と観測データの分散共分散行列の平均的な差を指標化したもので、値の下限値である0.0に近いほど適合が良いと判断します。ただし、RMRは標準化されていない分散共分散行列に基づいたデータの単位に依存した値であるため、GFIやAGFIのように基準となる目安を考えることが困難です。
そこで、標準化によってデータの単位の違いによる影響を取り除いた指標であるSRMR(Standardized Root Mean square Residual) が用いられる場合があります。SRMRは、RMRと同じように0.0に近いほど良いと判断しますが、標準化されている指標のため基準となる目安を考えやすく、RMSEAと同じように0.05以下であれば良好で0.1以上で良くない適合と解釈する基準がよく利用されます。そのほか、0.08以下であれば当てはまりが良いと判断する基準も利用されます。[3] Hu, L. & Bentler, P. (1999).
RMRは、Amosで推定値を計算すると自動的に算出され、Amos出力ウィンドウの「モデル適合」の欄にGFI、AGFIとともに一覧で表示されますが、SRMRは標準機能として用意されていないため推定値の計算によって自動的には算出されません。AmosでSRMRの値を求めるためには、別途プラグインメニューを使用します。プラグインメニューは標準で用意されているためモジュールの追加インストールなどは不要です。
■ AmosでSRMR(Standardized Root Mean square Residual) を出力する方法
以下の手順は、Amosでパス図を完成させた後、ファイルに名前を付けて保存してから行います。
(1)「ツール」メニューから「プラグイン」を選択します。
(2)「Standardized RMR」をクリックします。
上記のStandardized RMRダイアログボックスが表示されますが、この時点ではボックス内には何も表示されていません。このボックスを表示させたままの状態で推定値の計算を実行することで、ボックス内に計算結果を表示させることができます。
(3) 推定値の計算ボタンをクリックします。
※推定値の計算を行うにはモデル(パス図)をあらかじめ保存しておく必要があります。
推定値の計算によって、空欄であったダイアログボックス内にSRMRが表示されます。この例では、SRMR=0.0271でありモデルの適合は良いようです。このようにAmosでは、プラグインメニューを使用することでSRMRを出力させることができます。
ただし、推定値を計算することで自動的に出力されるGFIやAGFI、RMSEAをはじめとするその他の適当度指標と異なり、SRMRはテキストマクロに対応していないため、パス図にSRMRの値を自動的に表示させることはできません。また、SRMRはAmos出力ファイルにも書き込まれないため、ファイルを保存してもSRMRの値は保存されず、推定値を計算した後に画面上で確認するにとどまります。
目的や使い方、用途に応じて、IBM SPSS Amosを有効にご活用ください。
(この記事のスクリーンショットは、IBM SPSS Amos 25 を使用しています)
■ 参考文献
[1] IBM SPSS Amos User Guide.pdf
[2] 豊田秀樹 (編著)『共分散構造分析 [入門編]』東京図書 (1998)
[3] Hu, L. & Bentler, P. (1999). Cutoff criteria for fit indices in covariance structure analysis: conventional criteria versus new alternatives. Structural Equation Modeling, 6, 1-55.
[4] 豊田秀樹 (編著)『共分散構造分析 [Amos編]』東京図書 (2007)
[5] 豊田秀樹 (編著)『共分散構造分析 [疑問編]』朝倉書店 (2011)
[6] 平井明代 (編著)『教育・心理系研究のためのデータ分析入門 – 理論と実践から学ぶSPSS活用法』東京図書 (2017)
■ IBM SPSS Amos
IBM SPSS Amosは、顧客満足の要因の特定や影響度の分析、購買行動における認知や態度、意図などの測定とモデル化、薬や治療・医師の対応などによる患者への影響など、さまざまな変数の影響を調べ、因果関係を明らかにしたい場合に適用される共分散構造分析(構造方程式モデリング)を実行することができるソフトウェアです。複雑なプログラムを必要とせず、マウスの簡単な操作によってモデル構築とモデル適合を評価することができます。
https://www.stats-guild.com/ibm-spss/amos