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IBM SPSSによるデータ分析、情報活用

時間と分をあらわす変数を統合する方法

時間や分をあらわす変数の概要

統計解析・データ分析では、睡眠時間、労働時間、滞在時間など、さまざまな時間や期間をあらわす変数を用いる場合があります。時間をあらわす変数の単位は、年(YYYY)・月(MM)・日(DD)・時(hh)・分(mm)・秒(ss)、年月日(YYYY/MM/DD)、時分秒(hh:mm:ss)などさまざまな形式が考えられますが、アンケート調査の場合は、回答のしやすさも考慮して、たとえば、回答者の睡眠時間を調べるために、次のようなシンプルな形式の設問を用意することがよくあります。 Q1.1日の睡眠時間を教えてください。 (  )時間(  )分 このような設問の回答をデータファイルに入力する際は、以下のように「時間」を表す変数と、「分」を表す変数の2つにそれぞれの数値を入力することになり、睡眠時間を意味する変数が分割されます。
上記の例の1ケース目は「5」時間「30」分、2ケース目は「6」時間「0分」であることを意味し、データセットから個々人の睡眠時間を読み取ることはできますが、変数が2つに分割されているため、このままでは平均睡眠時間として意味のある統計量を計算するのは困難です。
「時間」と「分」が分割された個別の変数のままで平均値を計算すると、上記の例では、「時間」は平均6.53(時間)、「分」は平均19.00(分)になっています。しかし、これは睡眠時間の平均としてどのように解釈すればよいものなのでしょうか。また、グラフ(ヒストグラム)も別々に出力されることになるため、睡眠時間の分布の状態はよくわかりません。
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上記の例で、睡眠時間を正しく分析できるようにするためには、2つに分割されている睡眠時間(「時間」「分」)を1つの変数に統合する必要があります。変数を統合するためには、計算式を使用して「時間をあらわす変数を分単位に変換する」(方法1)と、「日付と時刻ウィザードを使用する」(方法2)の、2つのやり方が考えられます。

方法1:時間をあらわす変数を分単位に変換する

睡眠時間の平均値を計算するために、変数の計算ダイアログボックスを使用して、時間をあらわす変数を分単位に変更して統合するか、分をあらわす変数を時間単位に変更して統合します。この例では、前者の時間の変数を分単位に換算する方法で試してみます。 1時間=60分なので、時間の値に60を掛けて分単位に直します。 ■SPSSの操作手順 (1) 「変換」メニュー >「変数の計算」を選択します。 (2) 「目標変数」に「睡眠時間」と入力します。 (3) 「数式」に「時間 * 60 + 分」と入力します。
(4) 「OK」ボタンをクリックします。 「睡眠時間」がデータセットに追加されました (整数表示に変更済み) 。単位が「分」に統一されており、1ケース目の睡眠時間は330分、2ケース目の睡眠時間は360分であることが分かります。これで睡眠時間の変数が1変数に統合されたので、統計量の計算やグラフ作成で使いやすくなりました。
(5) 「睡眠時間」の列が選択された状態で「記述統計を実行」ボタンをクリックします。 (参考:ワンクリック記述統計による度数や平均値の簡単出力
平均値は410.64(分)です。これを時間単位で見るために60(分)で割ると、約「6.844」(時間)になります。時間と分の表記にすると、平均睡眠時間は約6時間50分であることが分かります。 ※410.64(分)÷60(分)=6.844(時間) ※0.844(時間)×60(分)=50.64(分) 同じ要領で換算すると、標準偏差が99.205分なので約1時間39分、最小値が225(分)なので3時間45分、最大値が570(分)なので9時間30分と読み取ることができます。 このように、時間と分の変数が別々に入力されている場合は、単位を時間や分にあわせる加工を行うことで、平均値をはじめとする統計量の計算ができるようになります。この例では、時間の変数を分単位に加工しましたが、反対に分単位の変数を時間単位にあわせて使用する方法もあります。

方法2:日付と時刻ウィザードを使用する

時間単位の変数を統合するためには、変数の計算の機能を使用するほかに、日付と時刻ウィザードを用いる方法があります。この機能を使用すると「年」「月」「日」「時」「分」「秒」など複数の変数に分割されている変数を統合して、日付/時刻変数を作成することができます。日付/時刻変数は、はじめから日付や時間を意味する変数としてみなされているので、統計量の計算などに便利です。 (1) 「変換」メニュー >「日付と時刻ウィザード」を選択します。 (2) 「日付または時刻部分を保持する変数から日付時刻変数を作成」を選択します。
(3) 「次へ」ボタンをクリックします。 (4) 「時間」を「時」ボックス、「分」を「分」ボックスに移動します。
※ボックスが縦に潰れていますが加工上は問題ありません。 (5) 「次へ」ボタンをクリックします。 (6) 「変数」ボックスに任意の名前を入力します(この例では「睡眠時間」)。 (7) 「出力形式」から「hh:mm」を選択します。
「hh:mm」の書式は、時間と分をあらわす形式です。もし、時間と分に加えて秒まで表したい場合は「hh:mm:ss」の書式を使用します。また、変数ラベルの設定は補足情報ですので、入力は任意です。 (8) 「完了」ボタンをクリックします。
時間と分を「hh:mm」の書式であらわした新変数が作成されます。1ケース目の睡眠時間は5時間30分(5:30)、2ケース目の睡眠時間は6時間0分(6:00)であることが分かります。この変数は、日付/時間変数になっているため直接的な解釈がしやすく、このままの形式で平均値をはじめとする統計量の計算を行うことができます。 (9) 「睡眠時間」の列が選択された状態で「記述統計を実行」ボタンをクリックします。
日付/時刻変数は、はじめから日付や時刻を意味する変数として処理されるので、平均値などの統計量も解釈しやすくなります。統計量のテーブルから、平均睡眠時間は6時間50分(6:50)であることが分かります。標準偏差は1時間39分(1:39)、睡眠時間が一番短い人で3時間45分(3:45)、一番長い人で9時間30分(9:30)といったことが簡単に読み取れます。
ヒストグラム
グラフをみると、睡眠時間が5時間~6時間を中心とする層と、8時間~9時間を中心とする層の2グループの存在が示唆されます。 このように、日付や時間をあらわす変数で分析を行う場合は、目的に応じて事前に計算式などで変数の加工を行ったり、日付と時刻ウィザードの機能などを使用する必要性がありますが、時間の情報から有益な示唆を得られることも多く、研究の課題や目的に応じて、統計解析・データ分析における重要な変数になりえます。 この機能は、IBM SPSS Statisticsの基本ソフトウェアである「Base」のみで利用可能です。 目的や使い方、用途に応じて、IBM SPSS製品を有効にご活用いただき、課題解決・価値創造にお役立てください。
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