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IBM SPSSによるデータ分析、情報活用

独立したサンプルのt検定の効果量

平均値の差の大きさをあらわす効果量

独立したサンプルのt検定は、2群の平均値の比較を行う基本的な検定手法です。独立したサンプルのt検定によって、2群の平均値に有意差が認められるかどうかを確認することができますが、t検定をはじめとする統計的仮説検定は、サンプルサイズに比例して有意差を認めやすい性質を持つため、統計的な有意差だけでなく、実質的な差を評価することが重要です。実質的な差は効果量(effect size)によって調べることができます。効果量は測定単位に依存しない実質的な差の大きさを示す値として解釈することができ、研究、分析上重要な指標の1つになります。

Cohenのd

Cohenのd(Cohen’s d)は、2群の平均値の差の大きさを示す代表的な効果量としてよく使用されています。標本分散を使用して求める標本効果量と、不偏分散を使用する推測統計的な効果量がありますが、IBM SPSS Statisticsでは、不偏分散を使用したd値が求められます。サンプルサイズが十分であれば両者の値はほとんど変わりません。独立したサンプルのt検定におけるCohenのdは、2群の平均値の差を、2群を合わせた(プールした)標準偏差で割ることで求められます。

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ただし、標本分散を使用して求める値のことをd値と呼び、IBM SPSS Statisticsで出力される不偏分散を使用するd値のことをCohen’s gやHedges’ gと呼ぶ場合もあります。

独立したサンプルのt検定で効果量を出力する手順

従来のIBM SPSS Statisticsでは、t検定で使用される効果量は出力されませんでしたが、新バージョンのIBM SPSS Statistics 27(2020年6月リリース) から「1サンプルのt検定」、「独立したサンプルのt検定」、「対応のあるサンプルのt検定」、「一元配置分散分析」で、効果量(標準効果量)の出力に対応しました。独立したサンプルのt検定で出力される効果量はCohenのd(Cohen’s d)、Hedgesの補正(Hedges’ correction)、Glassのデルタ(Glass’s delta)の3種類です。

(1)「分析」メニュー>「平均の比較」>「独立したサンプルのt検定」を選択します。 (2)「検定変数」に「従属変数」、「グループ化変数」に「独立変数」を指定します。 (3)「グループの定義」ボタンをクリックします。 (4)「グループ1」と「グループ2」に比較する2群をあらわす値を指定します。 (5)「続行」ボタンをクリックします。
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「効果サイズの推定」の選択がデフォルトで有効になっています。この設定によって、独立したサンプルのt検定で利用される効果量が出力されます。これは、IBM SPSS Statistics バージョン27から追加された新機能です。

(6)「OK」ボタンをクリックします。

効果量の確認

独立したサンプルのt検定の効果量として、Cohenのd、Hedgesの補正、Glassのデルタの3種類が以下のように出力されます。

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この例では、Cohenのdはd=0.392であり、効果量の一般的な目安に照らすと、小さい効果(0.20)から中くらいの効果(0.50)であることが分かります。効果量は仮説検定とは異なり、サンプルサイズに依存しない標準化された差の大きさ(効果)として評価することができます。

v26以前の効果量の計算方法

IBM SPSS Statisticsバージョン26以前では、効果量が自動的に出力されませんでしたので、計算機やExcelを使用して効果量を計算する必要があります。Cohenのdは、t値の絶対値と各群のサンプルサイズに基づく以下の式でも計算することができます。

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この例での効果量は、d=0.392となり、v27 で出力されるCohenのdと一致します。

t検定における効果量の出力は、IBM SPSS Statisticsのバージョン27から基本製品の Base に追加された新機能ですが、効果量のほかにも、順序尺度の一致度を調べる場合に用いるコーエンの重み付けカッパ係数、サンプルサイズや検出力を分析することができるパワーアナリシス(検定力分析)など、便利な機能がたくさん追加されています。

目的や使い方、用途に応じて、IBM SPSS製品を有効にご活用いただき、課題解決・価値創造にお役立てください。

■IBM SPSS Statistics Base IBM SPSS Statisticsによるデータ入力、読込み、データ加工、基本統計量の出力、推測統計(仮説検定・信頼区間)、回帰分析、因子分析、クラスター分析、分散分析、グラフ作成、外部ファイルへのエクスポート、拡張機能などを有する基本モジュール https://www.stats-guild.com/ibm-spss ■ オンラインコース IBM SPSS Statisticsによる統計分析 https://www.stats-guild.com/spss-e-learning/courselist
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